家族信託と成年後見、遺言との比較
3つの制度を使い分け、補完的に利用することも検討する必要があります!
信託制度と成年後見との違い
信託制度と成年後見には主に以下のような5つの違いがあります。
- 効力発生のタイミング
- 身上監護
- 対象財産
- 他人のための財産の利用
- 死後の財産管理処分
1. 効力発生のタイミング
成年後見では、本人が判断能力を欠く状態になった後、後見開始の審判がなされたときに効力が生じます。
これに対し、信託制度は規定の仕方によってはすぐにでも財産の管理を開始することができます。
2. 身上監護
身上監護とは、被後見人の生活、治療、療養、介護などに関する法律行為を行うことをいいます。
例えば、本人の住居の確保及び生活環境の整備、施設等の入退所の契約、治療や入院の手続等の法律行為がこれに当たります。
身上監護は「法律行為」を行うことであり、本人の直接的な介護などの「事実行為」を含むものではありませんので、直接的な介護などについては、他の親族や病院、施設等に委ねてもかまいません。
成年後見は財産管理及び身上監護のための制度となっています。
これに対し、信託制度は財産管理及び財産承継の制度であり、身上監護は含まれません。
そのため、例えば施設の入所契約の締結について信託を利用して行うことはできません。
3. 対象財産
成年後見では全財産を管理することになります。
これに対し、信託制度では全財産を対象とすることはできず、特定の財産を決める必要があります。
4. 他人のための財産の利用
成年後見では他人のために財産を利用することは困難となります。
これに対し、信託制度では信託行為における規定の仕方により他人のために財産を利用処分することもできます。
5. 死後の財産管理処分
成年後見では、被後見人の死亡により終了します。
これに対し、信託制度では信託行為における規定の仕方により、委託者の死後の財産管理処分について決めることができます。
成年後見 | 信託制度 | |
1. 効力発生のタイミング | 本人が判断能力を欠く状態になった後 | すぐにでも可 |
2. 身上監護 | 財産管理及び身上監護 | 財産管理及び財産承継 |
3. 対象財産 | 全財産 | 特定の財産 |
4. 他人のための財産の利用 | 不可 | 可能 |
5. 死後の財産管理処分 | 不可 | 可能 |
信託制度と遺言の違い
信託制度と遺言は主に以下のような3つの違いがあります。
- 二次相続対策の可否
- 様式性
- 継続性
1. 二次相続対策の可否
遺言では一代先までしか承継人を決めることはできません。
これに対し、信託制度では2代3代先の承継人を定めることができます。
この点が最も大きな違いとなります。
2. 様式性
遺言には、自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言という3種類がありますが、それぞれ法律で決まった方法で作成しなければならないという決まりがあります。
これに対し信託制度では契約が成立すれば足りるため、この形で信託契約書を作らなければならない、というものはありません。
3. 継続性
遺言は死亡時に1回だけ効力が発生します。
これに対し、信託制度は委託者の死亡に関わらず信託設定時から信託終了時までの継続的な財産管理及び処分に関して決めておくことができます。
そのため、遺言では対応できない認知症の問題や死後の財産管理、二次相続の問題にまで幅広く対応できます。
遺言 | 信託制度 | |
1. 二次相続対策の可否 | 不可 | 可能 |
2. 様式性 | あり | なし |
3. 継続性 | なし | あり |
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