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コラム

家族信託 2021/11/14

家族信託は公正証書にすべきか?

公正証書 家族信託

家族信託契約は公正証書にしなければならないのか?

公正証書とは、公証人が作成する公文書のことをいいます。
公証人は、原則として、裁判官や検察官あるいは弁護士として法律実務に携わった者で、公募に応じたものの中から、法務大臣が任命します(公証人法第13条)。

家族信託契約は、契約当事者の合意があれば成立するため、必ずしも公正証書にする必要があるわけではありません。

但し、信託契約書を公正証書にしなかった場合に、その後の手続きや親族とのトラブルになる等、不都合が生じることがあります。
具体的なケースで公正証書にすべきかどうかを判断するために、以下、家族信託契約を公正証書にするメリット・デメリットについて解説いたします。

家族信託契約を公正証書にするメリット・デメリット

比較しやすいように、家族信託契約を公正証書にするメリット・デメリットを表にしましたのでご覧ください。

  信託契約公正証書   私文書
メリット
  1. 本人の意思能力と家族信託をする意思の有無について、後日紛争になりにくくなる。
  2. 契約書をなくした場合でも、再発行が可能。
  3. 金融機関で信託口口座を開くことができる。
  4. 信託内借入(信託財産を担保にして金融機関から融資を受けること)ができる。
 

  1. 信託契約を締結するまでの日数が公正証書を作成する場合に比べて少し早くなる。
  2. 公証役場に払うコストを省ける。
    ※契約書に貼る収入印紙200円は必要。
  3. 平日の日中忙しい人でも契約できる。
デメリット
  1. 時間がかかる。
  2. 公証役場側の準備に2週間程度かかる。
  3. 公証役場に払う手数料がかかる。
    ※手数料については後述します。
  4. 委託者と受託者は公証人の面前で契約をする必要がある。
    ※平日の日中しか対応してくれません。
  1. 後日、紛争になる可能性が残る。
    例:委託者の判断能力の欠如、偽造、印鑑の無断使用を疑われる。
  2. 契約書を紛失すると対応できなくなる可能性が残る。
  3. 私文書では信託口口座を開設できない。
  4. 信託内借入(信託財産を担保にして金融機関から融資を受けること)ができない。

 

公正証書にすべきかの判断基準

上記メリット・デメリットを見ると、家族信託契約書を公正証書にすべきかについては、

①公正証書にしなければならないケース
②公正証書にすべきケース
③公正証書にする必要がないケース
④公正証書にする余裕がないケース

の4つに分けて考えることができます。
具体的には以下のようになります。

  • 公正証書にしなければならないケース
    ①金融機関で信託口口座の開設を希望する場合
    ②信託内借入(信託財産を担保に金融機関から融資を受けること)を希望する場合
  • 公正証書にすべきケース
    ①委託者の判断能力の低下が見られ、後日争いになる可能性がある場合
    ②家族間の話し合いがスムーズにいかず、後日争いになる可能性がある場合
    ③信託契約書を保管するための金庫がないなど、保管能力に不安がある場合
    ④家族間の話し合いはスムーズにいったが、将来の紛争の可能性をなくして確実に財産を管理・承継してもらうことを希望される場合
  • 公正証書にする必要がないケース
    以下の条件を満たしている場合
    ①委託者の判断能力に問題がない。
    ②推定相続人が少なく、家族間の仲も円満である。
    ③金庫など保管場所もしっかり確保している。
    ※司法書士などに依頼している場合は、別途費用はかかりますが、契約書を余分に作成して保管してもらうことも検討するとよいでしょう。
  • 公正証書にする余裕がないケース
    最近急に物忘れが多くなり、公正証書にする時間を待っていたのでは手遅れになる可能性がある場合

 

以上、家族信託契約書は常に公正証書にしなければならないわけではありません。
自分の場合はどれに当たるのかを見て公正証書にすべきかを考えていただければと思います。

公正証書にする手続きの流れ

公正証書にする手続きの流れは以下のようになります。

  1. 信託契約書の案を必要書類と一緒に公証役場に提出する
  2. 公正証書の形に整えられた文案を公証役場からもらう。
  3. 公証役場に出向く日程を決める。
    (公証人に出張をお願いするときはその日程を決める)
  4. 当日、公証人の面前で公正証書を作成する。

 

【かかる期間の目安】
信託契約書の案を出してから公正証書を作成するまで約1か月かかります。

公正証書にする際に必要な書類

公正証書にする際に必要な書類は以下のようになります。

【信託財産に関する資料】

  1. 不動産の登記事項証明書
  2. 不動産の固定資産税評価証明書
  3. その他、通帳や株式に関する資料を求められることもあります。

 

【契約当事者に関する資料】

  1. 委託者・受託者の戸籍
  2. 委託者・受託者の印鑑証明書(発行後3か月以内)
  3. 委託者・受託者の住民票
  4. 委託者・受託者の身分証(運転免許証、パスポート、保険証など)

 

公正証書にするためにかかる費用

公正証書にするためにかかる費用としては以下の2つがあります。

①公証人に払う手数料
②司法書士など専門家に依頼した場合の報酬

 

1.公証人に払う手数料

公証人に対する手数料は、原則として、その目的価額により定められています(公証人手数料令9条)。

目的価額  手数料
100万円以下 5000円
100万円を超え200万円以下 7000円
200万円を超え500万円以下 11000円
500万円を超え1000万円以下 17000円
1000万円を超え3000万円以下 23000円
3000万円を超え5000万円以下 29000円
5000万円を超え1億円以下 43000円
1億円を超え3億円以下 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額
3億円を超え10億円以下 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額
10億円を超える場合 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額

※不動産の価格の算定
・建物・・・固定資産税評価額の金額そのまま
・土地・・・固定資産税評価額の金額×1.4倍(倍率は公証役場により異なる場合があります。)

※公証人に出張してもらった場合の手数料
信託当事者が病気等で公証役場に出向くことができない場合には、公証人に出張してもらうこともできます。
この場合の手数料は、目的価額による手数料額の1.5倍となります。
この他に、交通費(実費)、日当(1日2万円、4時間まで1万円)が必要になります。

 

2.司法書士・弁護士などの専門家の報酬

専門家に依頼して、契約書の文面を作成と公正証書にするための公証人とのやりとりをしてもらった場合に専門家に払う報酬額の相場は10万円~15万円+消費税となります。

どこの公証役場にいけばいいのか?

全国どこの公証役場でも対応可能です

契約者の自宅や勤務地に一番近い公証役場を選んでもかまいません。

公証役場ごとに混雑の具合は異なりますので、「行ける日はこの日しかない」という場合や、「1日でも早く公正証書にしたい」という希望がある場合は、いくつか公証役場に電話で予約状況を確認して都合のいい公証役場を選ぶとよいでしょう。

遺言者が病気等で公証役場に出向くことができない場合には、別途費用を払うことで公証人が出張して公正証書を作成することもできます。
但し、公証人は同じ都道府県の範囲内でしか出張することができない点に注意すべきです。
例えば、東京都内にある公証役場の公証人は、東京都内であれば出張できますが、東京都外には出張できません。
病気等で公証役場に出向くことができないために公証人の出張を希望する場合は、同じ都道府県内で公証役場を探すことになります。

全国の公証役場一覧を確認したい方はコチラ【日本公証人連合会のHP】

例えば、関東にある公証役場は以下の場所にあります。

  • 東京(45か所)
    池袋、高田馬場、新宿、新宿御苑、練馬、立川、中野、杉並、板橋、霞が関、日本橋、渋谷、神田、大森、文京、上野、浅草、丸の内、京橋、銀座、新橋、芝、麻布、目黒、五反田、世田谷、蒲田、王子、赤羽、小岩、葛飾、錦糸町、向島、千住、麹町、浜松町、八重洲、大塚、赤坂、昭和通り、武蔵野、八王子、町田、府中、多摩
  • 埼玉(10か所)
    所沢、川越、大宮、浦和、秩父、川口、熊谷、越谷、春日部、東松山
  • 千葉(10か所)
    千葉、船橋、市川合同、木更津、銚子、松戸、柏、成田、館山、茂原
  • 神奈川(15か所)
    川崎、相模原、博物館前本町、横浜駅西口、関内大通り、尾上町、みなとみらい、鶴見、上大岡、溝の口、藤沢、横須賀、小田原、平塚、厚木

 

 

 

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