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コラム

生前贈与 2021/07/17

生前贈与すると「特別受益」に当たる?

生前贈与すると「特別受益」に当たる?

特別受益とは

特別受益とは、特定の相続人が、被相続人から婚姻・養子縁組・生計の資本として生前贈与や遺贈を受けた際の利益のことをいい、特別受益を受けた相続人を特別受益者と呼びます。

相続人間での公平を確保するため、特定の相続人が被相続人から特別受益を受けている場合は、遺産分割の際、得た利益を遺産総額に加えた上で分配します。この受益分の考慮を「特別受益の持戻し」といいます。

特別受益者となる人の範囲

特別受益を受けた人をほかの相続人等と区別して「特別受益者」と呼びます。
この特別受益者には誰でもなれるわけではありません。

①推定相続人
生前贈与等がなされた時点において、推定相続人であった人は「特別受益者」に当たります。
※推定相続人とは、現在の状況で相続が発生した場合、遺産を相続するはずの人のことをいいます。

②相続人以外の第三者
相続人以外の第三者は原則として「特別受益者」に当たりません。
但し、例外的に第三者に対する贈与が実質的には相続人に対する贈与と同じだといえる場合には、これを特別受益として考えることができるとされています。
例えば、相続人の子どもに学費の援助をしたケースでは、裁判所は、学費は本来相続人が払うべきものであり、子どもに対する学費の援助は、実質的には相続人に対する贈与とかわらないとして、特別受益を認めました(神戸家裁尼崎支部昭和47年12月28日審判)。

生前贈与するとすべて「特別受益」に当たる?

すべての生前贈与が「特別受益」に当たるわけではありません。

特別受益に当たるのは以下の2つの条件を満たしたものに限ります。

1.婚姻・養子縁組・生計の資本としての贈与であること
法律では、「婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として」の生前贈与が特別受益とされています(民法903条1項)。
逆に言えば、婚姻、養子縁組、生計の資本ではない生前贈与であれば、特別受益にはならないということです。

2.親の扶養の範囲を超えること
婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本としての生前贈与であれば、すべて特別受益に当たるわけではありません。
親の扶養の範囲を超えることが条件となります。
親の扶養の範囲かどうかの判断は、被相続人の経済状況に左右されます。

例えば、
婚姻の際、「嫁いだからうちの遺産は渡さない」というように、あらかじめまとまった額の贈与を行う場合は特別受益と判断される可能性が非常に高く、逆に一般的なご祝儀レベルの支度金などの贈与であれば、特別受益と判断される可能性は低いといえます。
また、生活費として贈与の額が100万円だとしても、年収300万円の人が100万円の贈与をするのと、年収3,000万円の人が100万円の贈与をするのとでは、判断が変わってきます。

特別受益になるかどうかの重要ポイントは、遺産の前渡しなのか親の扶養の範囲なのかです。

  • 親の扶養の範囲内 → 特別受益に当たらない。
  • 遺産の前渡し   → 特別受益に当たる。

 

相続人同士でもめてしまった場合、最終的に「裁判所が」特別受益にあたるのかどうかの判断をすることになります
そのため、「私の場合は特別受益にあたりますか?」とご質問をいただいた際には、あくまでもお伺いしたご状況からの当事務所による意見という形でしかお答えすることができません。

特別受益に関わる法改正

2019年の相続法の改正で、特別受益に関わる仕組みにも変更が生じた部分がありますので、ここで確認しておきましょう。

1.特別受益の持戻し期間が10年へ改正
これまで遺留分の基礎財産に含める贈与の期限は限定されていませんでした。
しかし2019年7月1日から、遺留分の計算において、特別受益は相続開始前の10年間に限定されるものとなりました。
この改正により、相続人に対する贈与は相続開始前の10年間に限り遺留分の基礎財産に含めることとなります。
但し、これは遺留分の計算にのみ適用されるため、具体的相続分の計算の際は依然として特別受益に期間制限はありません。

2.配偶者への持戻し免除の改正
配偶者への持ち戻し免除の改正により、結婚20年以上の配偶者に対する自宅の生前贈与については、原則として、特別受益の扱いを受けなくなりました。
これまでは配偶者が自宅の生前贈与を受けていた場合、自宅は遺産の先渡しがされたものとして取り扱われ、特別受益にカウントされるので配偶者が遺産分割において受け取ることができる財産の総額がその分減らされていました。
しかし今回の改正により、20年以上の夫婦間で配偶者に対して自宅の遺贈または贈与がされた場合には、原則として遺産分割における計算上、特別受益としてカウントされないこととなりました。

特別受益者がいた場合の計算式と具体例

【具体的相続分の計算】
1.計算式

(相続開始時の財産+特別受益に該当する生前贈与)×相続分―特別受益=具体的相続分

 

相続開始時の財産に特別受益に該当する生前贈与を足したものを「みなし相続財産」と呼びます。
遺贈は相続開始時の財産に含めて計算しますが、持戻し免除の有無によって具体的相続分算定の際に差し引かれるか否かが変わってきます。

2.具体例
例えば、相続人が配偶者Aと子供2人(B・C)で、法定相続分での相続を行う場合
・相続開始時の財産:5,000万円
・Aへ不動産購入資金として2,000万円の生前贈与
・Bへ学資として1,500万円の生前贈与
・Cへ遺贈1,500万円
※持ち戻し免除の意思表示はされていないとします。

①まず、みなし相続財産を算出します。
5,000万円+2,000万円+1,500万円=8,500万円
②次に、法定相続分での相続割合を掛け合わせます。
A:8,500万円×1/2=4,250万円
B・C:8,500万円×1/4=2,125万円
③それぞれの特別受益を控除し、具体的な取得額を算出します。
A:4,250万円―2,000万円(特別受益)=2,250万円
B:2,125万円―1,500万円(特別受益)=625万円
C:2,125万円+1,500万円(遺贈)―1,500万円(特別受益)=2,125万円

特別受益の「持戻し免除」とは?

特別受益の持ち戻しの免除とは、特別受益の持ち戻しをさせないことを言います。
特別受益の持ち戻しが免除されると、特別受益の価額を相続財産の価額に加える必要がなくなります。
そのため、特定の相続人にだけ多くあげたいと希望するときに有効な手段となります。

持ち戻し免除の意思表示の形式に指定はありません。
明示的に意思表示している場合でなくても、黙示的に意思表示をしたとして認められることもあります。
たとえば,妻に対する不動産の生前贈与について,長年にわたる貢献に報い,その老後の生活の安定を図るためにしたもので,妻には他に老後の生活を支えるだけの資産も住居もないとして,被相続人が暗黙のうちに持ち戻し免除の意思表示をしたものと認定した裁判例があります(東京高裁決定平成8年8月26日)。

但し、特別受益の持ち戻しの免除ができるのは具体的相続分の計算に限られます。
遺留分の計算においては、持戻し免除の有無に関わらず、相続開始前10年間の特別受益を遺留分算定の基礎財産に持ち戻して計算します。

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