墓じまいの手続きを解説
目次
墓じまいとは
墓じまいとは、墓石を撤去し、墓所を更地にして使用権を返還することをいいます。
墓石や遺骨を勝手に別の場所に納骨したり、廃棄したりすることは法律のもとできません。
決められた手続きを踏むことが必要です。
一昔前は家督を相続する長男がお墓を受け継ぐという考え方がありました。
しかし、少子高齢化・核家族化が進む近年では、そもそも後を継いでくれる子供がいなかったり、進学や就職、結婚などをきっかけに都市部に移り住むことで頻繁な帰省が難しい状況になるケースが多くなりました。
「お墓を現在の住まいの近くに移したい。」「自分に代わって寺院に永代供養をお願いしたい。」
そのような動機で、墓じまいを選択する方が増えてきています。
では、墓じまいの手続きはどのように行うのでしょうか?
墓じまいの手続き全体の流れ
最も一般的なお墓の引越しをする場合の墓じまいの流れは6つのステップを踏みます。
(手元供養や散骨の場合は改葬の手続きは不要です。)
- 新しい墓地
管理者に墓地使用許可証等を発行してもらう。
↓ - 今のお墓がある役所
改葬許可申請書を取得する。
↓ - 今のお墓がある墓地
管理者に埋蔵証明書等を発行してもらう。
↓ - 今のお墓がある地域の役所
改葬許可証を発行してもらう。
↓ - 今のお墓がある墓地
管理者に改葬許可証を提示し、遺骨を取り出す。
↓ - 新しい墓地
管理者に必要書類を渡し、埋葬する。
以下の6つのステップについて解説いたします。
ステップ1:新しい墓地の管理者から墓地使用許可証等を発行してもらう。
墓じまいをしてお墓の引越しをする場合、引っ越し先がなくては始まらないので、まずは新しい墓地の管理者から墓地の使用を許可する旨の書類を発行してもらいます。
墓地の使用を許可する旨の書類は墓地によって書式が異なります。
文書のタイトルは「墓地使用承諾証」「受入証明書」「永代使用許可証」などがあります。
イメージしやすいように、見本を挙げます。
【永代使用許可権利証の見本】
【受入証明書の見本】
ステップ2:今のお墓がある役所から改葬許可申請書を取得する。
次に今のお墓がある地域の役場で「改葬許可申請書」をもらいます。
各役場のホームページからもダウンロード可能です。
自治体ごとに申請書が異なるので、必ず今のお墓がある役場のものを取り寄せます。
イメージしやすいように、見本を挙げます。
【改葬許可申請書の見本】
ステップ3:今のお墓がある墓地の管理者から埋蔵証明書等を発行してもらう。
改葬許可申請書を今のお墓の管理者に提出し、申請書の所定の欄に署名・捺印をしてもらいます。
自治体よっては申請書とは別に証明書を発行するところもあります。
これが「埋蔵証明書」又は「収蔵証明書」「埋葬証明書」になります。
【用語解説】
※埋蔵とは、お墓に火葬したご遺骨を納骨することをいいます。
※収蔵とは、納骨堂にご遺骨を納骨することをいいます。
※埋葬とは、遺体を骨壺に入れずに直接土に埋めることをいいます。
納骨とは、骨を骨壺に入れた状態で寺院や霊園に納めることをいいます。
「寺院や霊園」に納骨することを「埋蔵」といいます。
「納骨堂」に納骨することを特に「収蔵」と表現します。
これに対し、遺体の状態であっても火葬した遺骨の状態であっても、骨を骨壺に入れずに地中に直接埋めることはすべて「埋葬」に該当します。
【見本】
まず、改葬許可申請書に署名捺印するタイプのものはステップ2で挙げた申請書にお墓の管理者が署名捺印したものが埋蔵(収蔵・埋葬)証明書になります。
次に、申請書とは別に証明書を発行するタイプの場合は以下のような文書になります。
(参考:彦根市)
ステップ4:今のお墓がある地域の役所から改葬許可証を発行してもらう。
次に、今のお墓がある地域の役所に①墓地使用許可証(又は受入証明書、永代使用許可証)と②埋蔵(埋葬・収蔵)証明書を提出して、「改葬許可証」を発行してもらいます。
手続きは郵送でも可能です。
改葬許可証の費用(手数料)は無料となっています。
ステップ5:今のお墓がある墓地の管理者に改葬許可書を提示し、遺骨を取り出す。
次に、「改葬許可証」を今のお墓の管理者に提出し、遺骨を取り出します。
遺骨の全部を取り出し、墓石の撤去や解体を行う場合は「閉眼供養」も行います。
【閉眼供養(へいがんくよう・へいげんくよう)とは?】
墓石には仏様となった故人の魂が宿ると言われています。
閉眼供養とは、墓石に宿っている仏様の魂を抜き、墓石をただの石に変えるという意味を持つ儀式のことをいいます。
「閉眼法要(へいげんほうよう)」や「魂抜き」、「性根抜き(しょうこんぬき)」と呼ばれることもあります。
閉眼供養は、僧侶にお願いして、親族立会の下で読経してもらいます。
仏様の魂を墓石から抜いてから、実際の撤去工事に入ります。
ほとんどの石材店・仏壇業者は、閉眼供養をしていないと処分してくれません。
お墓を自分で処分するのであれば、閉眼法要をするかどうかは個人の自由です。
行わなくてもお墓の引越しはできます。
なお、仏教の中でも浄土真宗本願寺派は魂の入れ替えをする考え方がないため閉眼供養を行いません。
ステップ6:新しい墓地の管理者に必要書類を渡し、埋葬する。
最後に、新しいお墓の管理者に①改葬許可証と、②受入証明書(又は墓地使用許可証、永代使用許可証)を提出し、遺骨を納骨(又は埋葬)します。
以上で墓じまいは終了です。
墓じまいにかかる費用の相場
墓じまいをして、遺骨を次の供養先に納めるまでにかかる費用総額は約50万~300万円です。
墓じまいにかかる費用は、「今の墓地での撤去費用」と「移転先での納骨費用」の2つに分けることができます。
- 今の墓地での撤去費用
・墓石の撤去費用
・閉眼供養のお布施
・離檀料 - 移転先での納骨費用
・納骨費用
・開眼供養のお布施
・維持費・管理料
移転先での遺骨の供養方法によって費用総額が大きく変動します。
特に新しいお墓を購入するかどうかが大きな分かれ道になります。
この記事では、「今の墓地での撤去費用」と「移転先での納骨費用」をまとめて墓じまいの費用総額としています。
それでは、内訳をみていきましょう。
1.今の墓地での撤去費用
撤去費用の内訳 | 費用 |
---|---|
墓石の撤去費 | 8万~15万円 / 墓地面積1㎡あたり |
閉眼供養のお布施 | 3万~5万円 |
離檀料 | 10万~20万円 |
墓石撤去費用
墓石の撤去費用にかかる相場は、墓石の大きさや撤去方法にもよりますが、1㎡あたり約8万~15万円程度です。
見積もりについては、公営霊園や共同墓地ではご自身でお近くの石材店に依頼することがほとんどですが、民間霊園の場合、管理者から石材店を指定される場合もあります。
寺院墓地では指定業者がいる場合といない場合があるので確認する必要があります。
閉眼供養のお布施代
閉眼供養をする場合、読経をしていただいた僧侶に対してお布施代を払うのが一般的です。
お寺によっても異なりますが、3万円~5万円ほどが相場と言われています。
離檀料
現在の墓地が寺院の管理する敷地内にある場合のみ必要になるのが離壇料です。
相場は3万円~20万円とも言われています。
寺院内の墓地を撤去するということは、檀家を辞めることになるため、離壇料は感謝の気持ちとして支払います。
離檀料の相場は地域やお寺により異なります。
相場よりも高い離壇料を請求されるといったトラブルも発生しています。
そのため、寺院に相談する前にご親戚や近所の石材店に離檀料について相談し、その土地の相場を情報収集しておくべきです。
2.移転先での納骨費
費用の内訳 | 費用相場 |
---|---|
納骨費用 | 数千円~300万円 |
開眼供養のお布施 | 3万円~10万円 |
納骨費用
納骨費用は埋葬方法によってかなりの幅があります。
新しいお墓を購入するかどうかが大きな分かれ道になります。
お墓タイプ | 費用相場 |
---|---|
新しく墓石を購入する場合 | 100万円~300万円 |
納骨堂 | 40万~100万円 |
樹木葬 | 20万円~100万円 |
永代供養墓(合葬墓) | 10万円~30万円 |
散骨 | 3万円~30万円 |
手元供養 | 数千円~10万円 |
開眼供養のお布施代
開眼供養の「開眼」とは、“仏様の眼を開く”という意味です。
墓じまいの際に行った閉眼供養で抜いた魂を新しいお墓に入れるために、新しい納骨先では開眼供養を行います。
開眼供養は閉眼供養と同様に、読経をしていただいた僧侶に対して御布施代を払うのが一般的です。その相場は3万円~10万円になります。
なお、閉眼供養と同様に仏教の中でも浄土真宗本願寺派は魂の入れ替えをする考え方がないため開眼供養も不要です。
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