孫に遺産を残す方法
孫は法定相続人ではない
誰が法定相続人となるかについては順位があります(民法887条、889条)
- 第一順位・・・子・孫
- 第二順位・・・両親・祖父母
- 第三順位・・・兄弟姉妹・その子
※配偶者がいれば常に相続人となります。
仮に、第一順位の子が既に死亡している場合、孫が代わりに相続人となります。
誰かの代わりに相続することを「代襲相続」と呼びます。
子も孫も既に死亡している場合は、ひ孫が代襲相続人となります。
死亡のほかにも、子が欠格事由や廃除により相続できなくなったときにも孫が代襲相続人となります。
被相続人の子が生存しており、その子が欠格事由や廃除されたといった事情がなければ、子は法定相続人とはなりません。
では、どのようにすれば法定相続人ではない孫に遺産を引き継がせることができるのでしょうか?
孫に遺産相続させるための4つの方法
孫に遺産相続させるためには以下の4つの方法があります。
- 遺言書を作成する
- 孫と養子縁組する
- 孫へ生前贈与する
- 生命保険金の受取人を孫にする
1.遺言書を作成する
孫に遺産を相続させる1つ目の方法は「遺言書を作成する」ことです。
遺言であれば法定相続人以外の人に遺産を引き継がせることができます。
孫は相続人ではないため、遺言書には「相続させる」と記載することはできません。
この場合、「遺贈する」と記載します。
2.孫と養子縁組する
養子縁組とは、血のつながりのない人に、法律上の親子関係を発生させることをいいます。
養子縁組をした場合、養子は、縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得します。
嫡出子とは、結婚している夫婦間に生まれた子のことをいいます。
養子縁組をすると、養子と養親との間に相続権が生じます。
養子縁組について詳しく知りたい方別のコラムで解説しておりますので、そちらをご覧ください。
養子縁組をすると相続関係はどうなるの?
3.孫へ生前贈与する
遺言や養子縁組のように、亡くなった後に財産を引き継がせる方法の他に、生前に財産を贈与する方法でも財産を引き継がせることができます。
ただし,後述するように贈与税については気を付ける必要があります。
4.生命保険金の受取人を孫にする
この方法は財産のうちの一部だけですが、遺産から切り離して直接孫の固有財産とすることができます。
注意点としては、相続税が発生する場合に、法定相続人が受取人であれば「法定相続人の数×500万円」の非課税枠の適用があるため、その分相続税が安くなるのですが、法定相続人でない孫が生命保険金を受け取った場合には、適用されません。
また、法定相続人以外の者が遺産を受け取るため「相続税額2割加算」が適用されるため、相続税の負担は増えることになります。
孫が相続人になる場合の相続分
1.代襲相続人となる場合
代襲相続とは、被相続人が死亡した時点で本来相続人となるはずであった人が既に死亡などにより相続できない場合に、その人を飛び越えて下の世代の者が代わりに相続する制度のことをいいます。
本来の相続人を被代襲者といいます。
新たに相続人となった人を代襲相続人といいます。
孫が代襲相続人となった場合の相続分は、先に亡くなった子の相続分と同じになります。
2.養子縁組の場合
養子縁組とは、血のつながりのない人に、法律上の親子関係を発生させることをいいます。
「法定相続人」には養子も含まれます。
そのため、養子となった孫は、法定相続人である子と同様の扱いをうけます。
したがって、養子となった孫の相続分は「子」の相続分と同じになります。
孫に遺産を残すときにかかる税金
孫に遺産を残すときに注意すべき税金は以下のの2つになります。
- 相続税
- 贈与税
1.相続税
孫は法定相続人ではないため、相続税はかからないのではないかと考えている方も多いという印象を受けます。
しかし、法定相続人でない孫に遺贈する場合でも相続税の対象になります。
相続税には基礎控除があります。
「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」を遺産総額から引いて計算するというものです。
したがって遺産総額が基礎控除を超える場合にのみ相続税が発生します。
そのため、すべてのケースで相続税が発生するわけではありません。
注意点としては、法定相続人以外の者に遺贈する場合、「相続税の2割加算」が適用されることです。
本来であれば、祖父母→子→孫の順番で相続され、相続税が2回課税されるところ、1回飛ばして孫に渡すため、2回課税される人との公平性を保つため「2割多く相続税を課す」という制度になっています。
したがって遺言により孫に遺贈する場合、相続税が2割加算されることになります。
参考:国税庁 相続税額の2割加算
2.贈与税
生前に、孫に贈与する場合は贈与税に注意する必要があります。
贈与税を少しでも軽くするために以下の制度を検討すべきです。
- 贈与税の暦年贈与の非課税枠110万円
- 教育資金の一括贈与の特例
・贈与税の暦年贈与の非課税枠110万円
まず、贈与税の暦年贈与の非課税枠110万円についてですが、生前贈与時に発生する贈与税には110万円の基礎控除があるため、年間110万円まで孫へ贈与しても贈与税が課税されません。
この方法は1回だけではなく、何度でも使えるため、毎年110万円以内の贈与をすることにより多額の財産を贈与税をかけずに引き継がせることができます。
また、法定相続人に対する贈与であれば、被相続人が亡くなる3年以内の贈与に対しては相続財産に持ち戻して計算されてしまいますが、法定相続人でない孫に対する贈与であれば3年以内の贈与であっても相続財産に持ち戻さずに計算されるため節税対策として効果的です。
・教育資金の一括贈与の特例
次に、教育資金の一括贈与の特例についてですが、この制度は原則30歳未満の子どもや孫に対して学費・教育資金を渡す場合に、その金額が1,500万円未満であれば贈与税が非課税になる制度です。
教育資金の一括贈与の特例は、暦年贈与非課税枠110万円や他の特例と併用して適用を受けることができます。
贈与者が亡くなった時点で残額がある場合、死亡時での残額が相続財産に加算されます。
この特例は将来かかる教育資金を「一括して」贈与する場合に使う制度です。
この制度は、金融機関でそれ専用の口座を開設し、教育資金として使った領収書を、その金融機関に提出しなければいけません。
また、孫が30歳になったときに、使い切れなかった金額に対して贈与税が課税されます。
そのため、使いづらい制度だと言われることもあります。
教育資金が「必要な都度」贈与する場合はこんな特例を使うまでもなく贈与税はかかりません。
ただ、教育資金として使ったことを証拠として残すため、祖父母が直接、学校や塾に振り込むといった工夫をする必要がでてきます。