未婚のいとこが死亡した場合、財産は誰に相続されるの?
いとこは法定相続人には該当しない!
いとこが亡くなられた際に、未婚で、ご両親・祖父母も既に亡くなっており、ご兄弟もいらっしゃらない場合、いとこの財産はどうなるのでしょうか?
いとこは法定相続人には該当しません。
したがって、相続人が誰もいないということになります。
何も対策を取らなければ、いとこの財産は国のものになってしまいます。
後になって「このことを知っていれば生前に何か手を打てたはずだ。」「亡くなった後でも何か手を打てないか」というお悩みをお持ちの方もたくさんいらっしゃいます。
ここでは、生前の対策と既に亡くなっている場合の対策について解説いたします。
生前の対策は2つ
生前であれば対策の選択肢は2つあります。
- 遺言書の作成
- 生前贈与
1.遺言書の作成
遺言書を作成すれば、相続人には該当しないいとこに財産を遺贈することができます。
注意点としては、財産の評価額が3000万円を超える場合です。
いとこに法定相続人がいない場合、相続税の基礎控除額は3000万円となります。
3000万円を超える場合、超えた部分に対して相続税が発生することになります。
いとこ等、法定相続人以外の者に遺贈する場合、「相続税の2割加算」が適用されるため、相続税が高くなるおそれがあります。
もし、相続税が多額になりそうなら生前に相続税対策を取ることも検討しなければなりません。
2.生前贈与
いとこが納得すれば、生前に贈与することもできます。
注意点としては、贈与財産の額が年間110万円を超える場合です。
贈与税には年間110万円までは贈与税がかからないという基礎控除があります。
110万円を超えた場合、超えた部分に対して贈与税が発生することになります。
将来亡くなったときの相続税と生前の贈与税の両方を比較してどちらがいいのかを検討しなければなりません。
既に亡くなっている場合の対策
すでに相続が発生している場合は「特別縁故者になるかどうか」を検討しなければなりません。
特別縁故者に該当すれば財産を引き継ぐことができる可能性が出てくるからです。
特別縁故者とは「亡くなられた方と特別な関係があった方」のことです。
特別縁故者になりたいと思っても誰でもなれるというわけでもなく、「いとこである」という理由だけでも特別縁故者にはなれません。
【特別縁故者に該当するケース】
最終的には裁判所の判断にはなりますが、認められる主なケースは次のような場合です。
- 被相続人と生計を同じくしていた者
- 被相続人の療養看護に努めた者
- その他被相続人と特別の縁故があった者
1.被相続人と生計を同じくしていた者
例えば、内縁の妻や夫、認知していない配偶者の連れ子(事実上の養子)などがこれに当たります。
2.被相続人の療養看護に努めた者
例えば、生前に看護や介護にあたった人などがこれに当たります。
しかし、業務として報酬を得ていた看護士、介護士、家政婦、付添人などは除かれます。
3.その他被相続人と特別の縁故があった者
例えば、遺言は無いが、生前に「自分が死んだら財産は譲る」などと約束を受けていた人や、親子同然のように親密な関係があった人がこれにあたります。
日記や手紙などで「自分が死んだら財産は譲る」などと書いてあったり、被相続人と親密だったことなどを証明するために証拠を求められることがあります。
最終的には家庭裁判所が、故人との関係性や財産分与についての意思表示の有無などの様々な事情を考慮して、総合的に判断することになります。
特別縁故者になるための手続き
特別縁故者の申立ての流れは、まず「相続財産管理人」の選任を裁判所に申し立てます。
そのあと裁判所では、法定相続人が本当に誰もいないかどうかを調査します。
その他債権者や受遺者がいないかの捜索も行います。
債権者や受遺者がいないこと、法定相続人がいないことが確定したら、3ヶ月以内に再度「相続財産分与の申し立て」を行ない、ご自身が財産を引き継げるようになります。
この財産分与の申し立てを行うまでに、最低でも10カ月はかかります。
【特別縁故者として財産を引き継ぐまでの流れ】
-
- 利害関係人が相続財産管理人選任の申立てを行う。
↓ - 裁判所により相続財産管理人が選任されたことが官報で公告される。
↓ 2か月以上 - 相続財産管理人が債権者や受遺者がいれば請求を申し出るべき旨の公告をする。
↓ 2か月以上 - 相続財産管理人が官報により相続人の捜索の公告を行う。
↓ 6か月以上 - 相続人不存在確定
↓ 3か月以内 - 特別縁故者がいれば財産分与の申立てができる。
認められた場合、特別縁故者に財産が分与される。
↓ - 最後に残った財産は国のものとなる。
- 利害関係人が相続財産管理人選任の申立てを行う。
特別縁故者による財産分与の申立てをすることができるのは、相続人不存在が確定した時点から3か月以内に限られます。
期間が短いため注意が必要です。
最後に
特別縁故者の申立てには時間も手間もかかります。
特別縁故者として認められる明確な基準はなく、個々の事例ごと裁判所が判断しています。
財産分与の割合も裁判所の裁量で決めます。
申立てをしたのに認められないこともあります。
生前であれば、遺言書を書いてもらう、贈与する、内縁の関係ではなく正式に籍をいれることなどを検討していただくのがベストな選択になります。
特別縁故者に関する手続きや、その他相続手続きにご心配などがある場合には、相続の経験が豊富な司法書士に是非ご相談いただくことをお勧めいたします。
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