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コラム

家族信託 2021/05/09

信託できる財産とできない財産

信託できる財産とできない財産

信託できる財産の範囲は?

信託財産とは?

信託財産とは、委託者が受託者に託した財産のことをいいます。
信託財産は、委託者の財産から分離可能で、かつ価値のある財産でなければなりません。
なぜならば、信託は、財産を受託者に移転し、その財産を管理運用したり、処分することがその仕組みとなっている制度だからです。

信託法上は、信託財産とすることができる財産の範囲について、特に制限を設けてはいません。
しかし、他の法律により、信託財産とするとことができなかったり、実務上信託財産とすることが困難な財産も存在します。

信託できない財産

信託できない財産は以下のようなものがあります。

  1. 債務、保証債務
  2. 預金債権
  3. 農地
  4. 年金受給権

 
1.債務、保証債務
信託財産は、金銭的価値に換算できるプラスの財産のみが対象となり、債務などのマイナスの財産は信託することができません
ただ、家族信託契約では対象外なだけで、別途債務引受契約をすれば、借金などの債務を受託者が代わりに負うこともできます。

2.預金債権
銀行にお金を預けている場合でも、預金債権そのものを信託財産の対象とすることはできません。
金融機関との預金契約において、預金債権を譲渡することが禁止されているからです。

とはいえ、銀行に対して「お金を返してください」と言える権利を他の人が代わりに行使できないだけで、一旦預金を払い戻しをした後、その金銭をどう使うかまでは制限されません。

そのため、預貯金を信託したい場合は、委託者が一旦預金を払い戻した上で、受託者の口座(信託口口座又は信託専用口座)に振込むという作業をすることで信託財産とすることが可能になります。

信託契約書には、「預金債権を信託する」旨を記載することはできないので、「金銭を信託する」旨の記載をするという配慮が必要になります。

3.農地
農地法では、信託の引き受けにより所有権を移転する場合、農業委員会は許可することができないとされています(農地法3条2項3号)。
そのため、農地のまま信託財産とすることはできません。

しかし、あくまで「農地のまま」では信託財産とすることができないだけで、宅地など農地以外に転用できれば信託財産とすることができます

農地を農地以外に転用するためには、農業委員会の許可や届出が必要になります。信託を希望する土地が市街化調整区域にあれば許可が必要となりますが、市街化区域にあれば届出で足ります。

たとえ現況が農地でも、将来農地以外に転用する予定がある場合は、転用することを条件として信託財産とする旨の条件付信託契約を結ぶことも可能です。

4.年金受給権
年金受給権は、特定人に専属し他の者に移転しない一身専属権とされています。
法律上も、年金の給付を受ける権利は譲渡できない旨が規定されています(国民年金法24条、厚生年金保険法41条1項本文)。
そのため、年金を本人の代わりに受託者が直接受け取ることはできません。

しかし、あくまで、受託者が直接受け取ることができないだけで、一旦委託者が受け取った後、どう使うかまでは制限されません。

そこで、委託者が受け取った後に受託者の口座に振込むことで信託財産とすることができます。
実際の方法として、手数料がかかりますが、自動送金で一定額を一定の日に、受託者の口座(信託口口座又は信託専用口座)へ入金するように銀行の自動送金サービスを利用するのが手間をかけずに済むので便利です。

注意点としては、年金として受け取るお金も信託財産としたい場合、信託契約書に「後から信託財産として追加することもできる」旨の追加信託の条項も記載しておくという配慮が必要になります。

信託できる財産

信託できる財産には以下のようなものが挙げられます。

  • 金銭
  • 不動産
  • 株式、投資信託
  • 動産(車、貴金属、骨董品など)
  • 知的財産権(特許権、著作権)

 
委託者の財産から分離可能で、かつ価値のある財産であれば、信託財産とすることができます。
信託法上、信託できる財産の範囲について特段の制限はないので、信託できない財産として挙げたものを除き、広く信託の対象になります。

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