認知症になるとできなくなること4選
預金の引き出し・振込・振替手続きができなくなる
金融機関側に、認知症により判断能力がないと認定されれば、預金者の銀行口座は凍結されてしまいます。
凍結されると、入金・引き出し、振り込みなどの行為ができなくなります。
背景には、「オレオレ詐欺」や「家族による財産の使い込み」といった問題があります。
銀行が訴えられるリスクもあります。
金融機関では、そのようなリスクに備えて、ご本人の意思能力がはっきりしない状態では、原則としてお金を動かすことを認めません。
預金が凍結された場合の対処法は、家庭裁判所に申し立て、後見人を選任してもらうことです。
後見人が選任されると、後見人が判断能力のない人に変わって預金の引き出し・振込・振替手続きをすることができるようになります。
【最近の全国銀行協会の動向】
令和3年2月18日、一般社団法人 全国銀行協会が、認知症患者が持つ預金の引き出しに関する指針を発表しました。
※全国銀行協会は、日本国内で活動している銀行を直接の会員とする組織で、わが国の銀行業界の代表として、銀行業の発展のためにさまざまな活動をしています。
今回の指針は、下記の全ての条件の下、代理権を持たない親族であっても払戻しに応じる姿勢を示しました。
- 判断能力の低下を確認
確認方法としては、医師の診断書提出や、複数銀行員による本人の面談が必要。 - 本人の利益に適合する場合であることを確認
入院や介護施設費用の請求書や親族支払いの領収書などの提示が必要。 - 預貯金者本人との関係性の分かる戸籍等の書類を提示
医療費など「本人の利益に適合する場合」とされているため、認知症の家族が自由にご本人のお金を引き出せるということではありません。
あくまでも、現段階では全国銀行協会の指針にすぎません。
実際のサービス化については各金融機関での判断になります。
具体的な窓口での対応などについて、各金融機関がどのようなサービスを打ち出すか、今後の動きが注目されます。
実家が売却できなくなる
意思能力がない方が売買契約を締結しても、法律上当然に無効となります(民法第3条の2)。
不動産売却において、当事者の本人確認及び意思確認は司法書士が行います。
「認知症」と言っても、軽度のものから重度のものまで程度の差があります。
意思能力がないとされるのは、認知症のうち重度のものに限ります。
司法書士によって、その判断基準に多少のバラつきはありますが、一般的には、下記が確認できれば、売却は可能と判断されることが多いです。
・実家を売却するという行為の意味を理解している
上記「実家を売却するという行為の意味を理解している」点について、一方的に質問をして相手が「うん」「はい」と返事をするだけでは意思能力があると判断することはできません。
これだけでは相手が意味を分かっているかはわからないからです。
会話ができることが前提となります。
もし、司法書士が本人に意思能力がないと判断した場合は、本人の代わりに「成年後見人」という法定代理人を選任する必要があります。
居住用不動産を売却する場合は、家庭裁判所に成年後見人を選任してもらうだけでなく、売却の許可を得なければなりません。
ここで言う「居住用建物」には、本人が生活の本拠として「現在」使用している不動産だけでなく、「過去」使用したことがある不動産や、「将来」居住の用に供する可能性のある不動産も含まれます。
居住用不動産は本人にとって特に重要な財産なので、売却の許可には相応の必要性が求められます。
売却が認められるのは、以下のようなケースです。
- 介護施設に入るための入所費用や月額費用を捻出するため
- 本人の生活費を捻出するため
- すでに介護施設などに入っており今後家に戻る予定がなく、維持管理費用や固定資産税が無駄になっている
もし家庭裁判所の許可が下りなければ、たとえ成年後見人が行った売買契約であっても居住用不動産の売買契約は無効となってしまいます。
なお、非居住用不動産の場合は家庭裁判所の許可を得ることなく売却することができます。
相続税対策ができなくなる
認知症になってしまうと、相続税対策をすることができなくなります。
相続税対策としては、生命保険の加入、子供・孫などへの生前贈与などがありますが、すべて意思能力があることが前提とされているからです。
遺産分割協議ができなくなる
意思能力のない人は遺産分割協議に参加できません。
遺産分割協議も法律行為であるため、意思能力がないと無効になってしまうからです。
「認知症」と言っても、軽度のものから重度のものまで程度の差があります。
意思能力がないとされるのは、認知症のうち重度のものに限ります。
司法書士に登記を依頼する場合、司法書士によって、その判断基準に多少のバラつきはありますが、下記が確認できれば、相続登記は可能と判断されることが多いです。
・誰が何を相続するか理解している
上記「誰が何を相続するか理解している」点について、一方的に質問をして相手が「うん」「はい」と返事をするだけでは意思能力があると判断することはできません。
これだけでは相手が意味を分かっているかはわからないからです。
会話ができることが前提となります。
司法書士が本人に意思能力がないと判断した場合、本人の代わりに「成年後見人」という法定代理人を選任する必要があります。
成年後見人が選任された場合、その成年後見人が本人に代わって遺産分割協議に参加することができます。