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コラム

相続放棄 2021/07/10

全員が相続放棄をした後は放置しても大丈夫?

全員が相続放棄をした後は放置しても大丈夫?

財産がどれくらい残っているか

全員が相続放棄をした後の処理は、相続財産がどれくらいあるかにより異なります。
以下、不動産など価値のある財産を残っている場合と借金のみで現金などの財産がほとんどない場合に分けて解説致します。

不動産など価値のある財産を残っている場合

【相続人の管理義務】
相続放棄したからといって、直ちに何もしなくてもよくなるということにはなりません。
法律では、「相続放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。」(民法940条)とされています。

ここでの「自己の財産におけるのと同一の注意義務」とは、このまま放置すると第三者に損害が生じる危険性があると分かっているような場合には何かしらの対処をしてくださいね、というものです。
例えば、家屋が老朽化して倒壊する危険があれば、補強工事をしなければなりませんし、雑草が生い茂って害虫が発生するのであれば、除草・駆除しなければなりません。
求められる注意義務の程度については、職業やその地位によって客観的に要求される程度の注意までは求められておらず,行為者自身の注意能力に応じて注意をしていれば足ります。
もし、この注意義務に反して第三者に損害を生じさせてしまった場合は損害に応じて弁償をしなければいけなくなります。

【相続財産管理人の申立て】
①債権者が申し立てる場合
相続放棄により相続人がいなくなった場合でも、被相続人の借金や財産が消えてなくなるわけではありません。
被相続人に財産があれば、債権者は手続きをとることにより、その財産から借金を回収することができます。
その手続きとは、家庭裁判所に「相続財産管理人」を申立てることです。

相続財産管理人の申立てにかかる費用としては、予納金、申立ての郵送費用、申立て手数料の収入印紙800円があります。
※予納金とは、相続財産が少なく、相続財産から相続財産管理人の報酬や経費を払えそうにない場合に、申立人が相続財産管理人の報酬等に充てる費用をあらかじめ裁判所に納めなければならないお金のことをいいます。
予納金はケースによって異なりますが、大体30万円から110万円ぐらいかかります。
相続財産管理人の申立てをするには100万円程度かかることを覚悟する必要があります。
遺産に100万円以上の価値があるかが申立てをするかどうかの1つの基準になります。

②相続人が申し立てる場合
借金はないが、誰も承継したくない空き家が残ることがあります。
とはいえ、放置しても相続放棄をした相続人には管理義務がずっと残ります。
そのため、空き家が残ってしまう場合は必ず相続財産管理人を選任する手続きをしなければならないことになります。
相続財産管理人が選任されれば、相続人は管理義務から解放されます。

相続人全員が相続放棄を検討するような場合、その空き家を売りに出してもなかなか買い手が見つからないケースが多いものです。
しかし他方で、相続財産管理人の選任に100万円程度の予納金を払うことを覚悟しなければなりません。
そこで、手間と時間がかかってもいいのであれば、空き家の財産的な価値が低い場合は相続放棄せずに、一旦相続した上で自分で売りに出すことも検討したほうがよいでしょう。

【相続財産管理人の申立ての手続き】
1.管轄
  被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
  管轄裁判所を調べたい方はこちら
2.申立人
  ・利害関係人(債権者、財産を管理している相続人、受遺者、特別縁故者など)
  ・検察官
3.必要書類

  1. 被相続人の住民票の除票(又は戸籍の附票の除票)
  2. 戸籍
    ①被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍
    ②被相続人の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍
    ③被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍
    ④被相続人の祖父母(直系尊属)の死亡の記載のある戸籍
    ⑤被相続人の兄弟姉妹で死亡している方がいらっしゃる場合,その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍
    ⑥代襲者としてのおいめいで死亡している方がいらっしゃる場合,そのおい又はめいの死亡の記載がある戸籍
  3. 相続放棄申述受理証明書
    相続放棄により相続人がいなくなった場合、相続人全員の相続放棄申述受理証明書
  4. 財産を証する資料
    ・既登記不動産がある場合、登記簿謄本
    ・未登記不動産がある場合、固定資産評価証明書
    ・預貯金・有価証券がある場合、通帳写し,残高証明書等
  5. 利害関係を証する資料
    債権者からの申立ての場合、金銭消費貸借契約書写し等
    相続人からの申立ての場合、戸籍
  6. 財産管理人の候補者の住所がわかる書類
    候補者がある場合には候補者の住民票又は戸籍附票
  7. 申立書、財産目録
    裁判所のホームページから以下の書式をダウンロードすることができます。
    記入例(相続財産管理人選任) (PDF:258KB)PDFファイル
    家事審判申立書(PDF:112KB)PDFファイル
    土地財産目録(PDF:29KB)PDFファイル
    建物財産目録(PDF:33KB)PDFファイル
    現金・預貯金・株式等財産目録 (PDF:28KB)PDFファイル

 

4.選任後の流れ
一般的な手続の流れは次のとおりです。途中で相続財産が無くなった場合はそこで手続は終了します。

  1. 選任された旨の公告
    家庭裁判所は,相続財産管理人選任の審判をしたときは,相続財産管理人が選任されたことを知らせるための公告をします。
  2. 他に債権者・受遺者がいないかどうかの公告
    1の公告から2か月が経過してから,財産管理人は,相続財産の債権者・受遺者を確認するための公告をします。
  3. 他に相続人がいないかどうかの公告
    2の公告から2か月が経過してから,家庭裁判所は,財産管理人の申立てにより,相続人を捜すため,6か月以上の期間を定めて公告をします。期間満了までに相続人が現れなければ,相続人がいないことが確定します。
  4. 特別縁故者による申立て
    3の公告の期間満了後,3か月以内に特別縁故者に対する相続財産分与の申立てがされることがあります。
  5. 遺産の売却
    必要があれば,随時,財産管理人は,家庭裁判所の許可を得て,被相続人の不動産や株を売却し,金銭に換えることもできます。
  6. 債権者等への支払い
    財産管理人は,法律にしたがって債権者や受遺者への支払をしたり,特別縁故者に対する相続財産分与の審判にしたがって特別縁故者に相続財産を分与するための手続をします。
  7. 国庫に帰属するための手続き
    6の支払等をして,相続財産が残った場合は,相続財産を国庫に引き継いで手続が終了します。

 
※かかる期間の目安としては、申立てから清算手続きの終了まで1年程度かかります

借金のみで現金などの財産がほとんどない場合

【相続財産管理人の申立ては不要】
亡くなった方がいくらかの不動産なり現金なりを残していれば、債権者へ貸したお金が戻ってくる可能性がありますが、借金のみで現金などの財産がまったく残っていなかったら、債権者が相続財産管理人を申し立てたところで、何も戻ってこなくなります。
この場合、予納金のみを支払って終了となってしまうため、債権者が相続財産管理人の申立てをすることは通常考えられません。

【相続人の管理義務】
借金のみで現金などの財産がまったく残っていない場合は、管理するプラスの財産もないため放置しても管理義務違反とはなりません。

但し、何もしないでいると債権者から催告状がたくさん届くため、精神的にビクビクする状態が続いてしまいます。
そのためにも、既にわかっている債権者には相続放棄申述受理証明書をこちらから送って請求を止めてもらうようにした方がよいでしょう。

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