遺言書を撤回する方法は?
遺言書は気が変わったらいつでも撤回できます
目次
遺言の撤回方法
撤回とは、特段の理由なく、撤回者の一方的な意思によって、法律行為をなかった状態に戻すことをいいます。
遺言の撤回方法としては、以下のようなものがあります。
- 新たに「遺言を撤回する」という遺言をする
- 前の遺言の内容と抵触する遺言
- 遺言と抵触する生前処分
- 遺言者が故意に遺言書を破棄した場合
- 遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄した場合
新たに「遺言を撤回する」という遺言をする方法
民法第1022条
遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って撤回できます。
「遺言の方式に従う」とは、以下のように遺言の種類によって異なります。
- 自筆証書遺言の場合
原則として全文と日付・署名を手書きで書くこと - 公正証書遺言の場合
二人の証人が立ち会いの下、公証人が遺言者から遺言内容を聴き取りながら作成すること - 秘密証書遺言の場合
遺言者が自分で作成した遺言書を封入し、遺言書作成に用いたハンコで封印したものを、公証役場において、二人以上の証人と公証人に提出すること
遺言の撤回は、遺言の方式に従ってさえいればよいので、撤回するときの遺言は3種類の遺言書のいずれの形式のものでも構いません。
公正証書遺言を、自筆証書遺言の方式で撤回したり、秘密証書遺言の方式により撤回することも可能です。
【撤回遺言の文例】
→「遺言者は○○年○○月○○日に作成した遺言は全部撤回する」
・一部のみの撤回の場合
→「遺言者は○○年○○月○○日に作成した遺言のうち、第何条については撤回する」
前の遺言の内容と抵触する遺言をする方法
民法第1023条
前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
前の遺言と後の遺言の内容が抵触するときは、その抵触する部分については、前の遺言を撤回したものとみなされます。
「抵触」とは、前の遺言を失効させなければ後の遺言の内容を実現できない程度に内容が矛盾することをいうとされています。
【具体例】
遺言書に「甲不動産はAに、乙不動産はBに相続させる」と記載していたとします。
後日、思い直して、新たに「乙不動産はCに相続させる」とする遺言書を作成しました。
この場合、甲不動産については抵触しないのでAに相続されますが、乙不動産については「乙不動産はBに相続させる」という部分が撤回されたものとみなされるため、Cに相続されることになります。
前の遺言の内容と抵触する生前処分
民法第1023条2項
前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。
遺言者が遺言の内容に抵触する生前処分をしたときも、抵触する部分について撤回されたものとみなされます。
「生前処分」とは、他の人に売却や贈与をしたり、家族信託契約により信託財産とすることをいいます。
【具体例】
遺言書に「甲不動産はAに、乙不動産はBに相続させる」と記載していたとします。
後日、遺言者本人が乙不動産をCに売却しました。
この場合、甲不動産については抵触しないのでAに相続されますが、乙不動産については「乙不動産はBに相続させる」という部分が撤回されたものとみなされるため、相続財産から外れることになります。
遺言者が故意に遺言書を破棄した場合
民法第1024条前段
遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。
遺言者が故意に遺言書を破棄したときも、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなされます。
「故意に」とは、わざとすることをいいます。
【具体例】
遺言書に「甲不動産はAに、乙不動産はBに相続させる」と記載していたとします。
後日、遺言者がわざと遺言書を破り捨ててしまいました。
この場合、遺言書はすべて撤回されたということになります。
遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄した場合
民法第1024条後段
遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。
遺言者がわざと遺贈の目的物を破棄したときも、撤回したものとみなされます。
【具体例】
遺言書に「自動車はAに相続させる」と記載していたとします。
後日、遺言者が自動車の廃車手続きをしました。
この場合、遺言書のうち、自動車の部分について、遺言が撤回されたものとみなされます。