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コラム

相続登記遺産整理 2021/05/30

遺産分割協議が無効・取消しになるケースとは?

遺産分割協議が無効・取消しになるケースとは?

無効と取消し

【無効】
無効とは、法律行為の効力が初めから確定的に生じていないことをいいます。
無効な法律行為の場合には、特別な意思表示をすることなく、当然に無効となります。
無効は誰でも主張でき、期間制限もありません。

遺産分割協議の場面で無効になるのは、①相続人の一部が参加していなかった場合、②相続人でない者が参加していた遺産分割協議、③民法上の法律行為の無効に当たる場合が挙げられます。

【取消し】
取消しとは、いったん生じた法律行為の効力を、初めに遡ってなかったことにすることをいいます。
取消しうる行為は取り消すまでは有効です。
取り消すことにより、初めに遡って確定的に無効となります。
取消しは取消権者のみ主張でき、期間制限もあります。

民法120条(取消権者)
行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
2 錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
 
民法126条(取消権の期間の制限)
取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。
行為の時から20年を経過したときも、同様とする。

 
遺産分割協議を取消すことができる場面は、相続人が制限行為能力者(未成年や被後見人、被保佐人、被補助人)なのに法定代理人を立てていなかったり、錯誤・詐欺・強迫行為があった場合になります。

相続人の一部が参加していなかった場合

遺産分割協議は、相続人全員による合意があって初めて有効に成立します。
1人でも相続人が欠けていると、その協議は無効となります。
相続人が誰かを調べるには戸籍を取得しなければなりません。
戸籍の読み取りの段階で間違えてしまうと、遺産分割協議を1からやり直しをしなければならなくなってしまいます。

なお、遺産分割協議成立後、新たに相続人が登場するような場合は、遺産分割協議をやり直す必要はありません。例としては、①死後認知、②失踪宣告取消しがあります。

①死後認知(民法910条)
認知とは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子供を、父又は母が、血縁上自分の子であると認めることをいいます。
認知によって発生した親子関係に伴う法的効果は、出生の時にさかのぼって生じます。
死後に、遺言や認知の訴えにより認知の効力が発生した場合は出生時から相続権を有していたことになります
しかし、先になされた遺産分割は、その時点では一応相続人全員の関与があったわけですから、やり直しまでを認めると他の相続人に対して大きな負担を強いることになってしまいます。
そこで、相続開始後、遺言や認知の訴えにより認知された者がいる場合でも、既になされた協議は有効とされています。
後に金銭的に調整することとなります。

(相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権)
第910条
相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。

 
②失踪宣告取消しの場合(民法32条1項2項)
失踪宣告とは,生死不明の者に対して,法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です。
死亡したとみなされると相続が開始されます。

後日、本人が生存していることが判明した場合は、失踪宣告を取り消すことができます。
しかし、先になされた遺産分割は、その時点では一応相続人全員の関与があったわけですから、やり直しまでを認めると他の相続人に対して大きな負担を強いることになってしまいます。
そこで、失踪宣告が取り消されても、既になされた遺産分割協議は有効とされています。

但し、遺産分割協議の結果利益を受けた相続人は、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返す義務を負うことになります。
つまり、生活費を除いて遊行費などに使ったものは返さなくて良いということです。

(失踪の宣告の取消し)
第32条
失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。

2 失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。

相続人でない者が参加していた遺産分割協議

相続人でないものが相続人として遺産分割協議に加わって、合意が成立した場合の遺産分割協議の効力

原則:相続人でないものが取得するとされた部分のみが無効となり、その他の部分は有効。

例外:相続人でない者が協議に参加しなかったとすれば、当該協議の内容が大きく異なっていたであろうと認められる場合は遺産分割協議全体が無効になる。

 
同じようなことが争点となった裁判例があります(大阪地方裁判所平成18年5月15日判決)。

この裁判例は、相続人として遺産分割に関与した方が、後に養子縁組無効と判断され、相続人でないことが確定してしまったため、遺産分割協議自体が無効ではないか争われたものです。
以下、判旨を抜粋します。

共同相続人でない者が参加して遺産分割協議が行われた場合であっても,共同相続人の全員が参加して当該協議が行われたものと認められる以上,直ちに当該協議の全部について瑕疵があるということはできないのであって,むしろ,共同相続人でない者に分配された相続財産のみを未分割の財産として再分割すれば足りるとするのが,当該協議に参加した者の通常の意思に合致するとみられ,また,法律関係の安定性や取引安全の保護の観点からすると,いったん遺産分割協議が成立し,これを前提とする相続財産の処分等がされた後に当該協議の効力を常に全面的に否定することは,できる限り避けるのが相当である。これらのことを考慮すると,共同相続人でない者が参加して行われた遺産分割協議は,原則として,当該共同相続人でない者の遺産取得に係る部分に限って無効となると解する。

ただ,当該共同相続人でない者が取得するとされた財産の種類や重要性,当該財産が遺産全体の中で占める割合その他諸般の事情を考慮して,当該共同相続人でない者が協議に参加しなかったとすれば,当該協議の内容が大きく異なっていたであろうと認められる場合など,当該共同相続人でない者の遺産取得に係る部分に限って無効となると解するときは著しく不当な結果を招き,正義に反する結果となる場合には,当該遺産分割協議の全部が無効となると解するのが相当である。

民法上の法律行為の無効に当たる場合

民法上、法律行為・意思表示の無効事由がある場合も、それぞれの規定に従って遺産分割協議は無効となります。
以下、例を挙げます。

  • 相続人に遺産分割の内容を理解できない(意思能力のない)人がいた場合
    例:相続人の中に5歳の子や重度の認知症の人がいるのに法定代理人を立てないで本人が署名押印をした場合
  • 協議の内容が強行法規や公序良俗に違反する場合
    例:違法な薬物取引や犯罪行為、基本的人権を侵害する内容の条項がある場合
  • 心裡留保に該当する場合
    心裡留保とは、本人の真意とは異なる内容を、本人が外部に表示することをいいます。
    例:冗談のつもりで言った場合
  • 通謀虚偽表示に該当する場合
    通謀虚偽表示とは、本人が相手方と通じて、虚偽の意思表示をすることをいいます。
    例:本人も相手方も土地の売買契約を締結するつもりがまったくないのに、お互いに相談のうえで、土地の所有名義を移した場合

民法上の法律行為の取消事由がある場合

上記の無効事由がある場合と同じように、民法上の法律行為・意思表示の取消事由がある場合には、遺産分割協議について取消しの意思表示をすることができます。
たとえば、錯誤・詐欺・強迫があった場合、相続人の一部が未成年者で法定代理人がいなかった場合が挙げられます。

1.錯誤があった場合(民法95条)
遺産分割協議の内容にて大きな誤解をしていた相続人がいるときには、その遺産分割を取り消すことができます。

民法第95条1項
意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤

 
2.詐欺・強迫があった場合(民法96条)
詐欺や強迫の事実があったかどうかが争いになるような場合には、取消の意思表示を行った上で、遺産分割協議無効確認の訴えを提起することができます。

民法第96条1項
詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

 
3.相続人の一部が未成年者で法定代理人がいなかった場合

(未成年者の法律行為)
民法第5条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。

遺産分割協議の解除

相続人全員の合意があれば、遺産分割協議を解除することができます(最高裁平成1年2月19日判決)。

解除された場合には、遡及的に協議が無効となります。
白紙の状態に戻るのです。
但し、遺産分割協議を信じて相続人の1人と取引した相手方は、保護されます。
たとえば、遺産分割に基づいて相続人名義に不動産の登記がされ、その登記を信じた者(第三者)がその不動産を購入した場合、その買主は保護されます。

(遺産の分割の効力)
民法第909条 遺産の分割は、相続開始の時に遡ってその効力を生ずる。
ただし、第三者の権利を害することはできない。

 
たとえ、遺産分割協議の内容を守らなかった人がいても、相続人の1人が解除することはできません(最高裁平成元年2月9日判決)。

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