相続分の指定とは
相続分の指定とは
相続分の指定とは、遺言により、共同相続人の全部または一部の者について、法定相続分の割合とは異なった割合で相続分を定め、またはこれを定めることを第三者に委託することをいいます(民法902条)。
相続分の指定は「遺言によってのみ」定めることができます。
相続人は、原則として法定相続分の権利を取得します。
しかし、被相続人が生前に予め法定相続分とは異なる割合で相続させる旨の遺言を作成していた場合、その割合で相続させることができます。
例えば、父が亡くなり、相続人が母Aと子Bの2人の場合、法定相続分は妻が2分の1、子が2分の1となります。
父が予め「すべて妻に3分の2、子に3分の1の割合で相続させる」とする遺言書を作成していれば、妻に多く相続させることができます。
相続分の指定の効果
相続分の指定の効果は以下の3つです。
- 法定相続分を無視できる
- 相続債務
- 対抗要件の具備
1.法定相続分を無視できる
相続分の指定がなされると、法定相続分に優先して各共同相続人の相続分が決まります。
2.相続債務
相続債務については、相続分の指定がなされた場合でも、債権者は相続分の指定に拘束されず、法定相続分に従って請求することができます。
ただし、相続人の内部関係においては、指定相続分に応じた負担割合になります。
したがって、仮に相続人が法定相続分に基づいて債権者に弁済した場合、後に他の相続人に対し、指定相続分に基づいて求償することができます。
3.対抗要件の具備
法定相続分を超える部分については、登記の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができないとされています(民法899条の2)。
したがって、相続分の指定において、法定相続分以上の持分の指定を受けた者でも、第三者より先に登記を備えなければ、法定相続分以上の持分の指定を受けたことを第三者に対抗できずに負けてしまうのです。
相続分の指定をした場合の注意点
相続分の指定をした場合の注意点2つ
- 相続分の指定でも遺留分は侵害できない
- 相続分の割合を指定しても具体的な内容は遺産分割協議が必要
1.相続分の指定でも遺留分は侵害できない
遺留分とは、一定範囲の相続人が、相続に際して最低限保障されている相続財産の割合のことをいいます。
本来、自分の財産を誰にどう相続させるかを自由に決めることができ、そのために遺言書という制度があります。
しかし、たとえば遺言書に「全財産を愛人のAに相続させる」と書かれていると、残された遺族のうち生活ができなくなる方が出てくることもあります。
そこで、民法では一定範囲の相続人に対して最低限もらえる財産を保障しているのです。
遺留分については別のコラムで解説しておりますのでそちらをご覧ください。
遺留分とは?
2.相続分の割合を指定しても具体的な内容は遺産分割協議が必要
相続財産が不動産の預貯金のみであり、遺言に「不動産はAに3分の2、Bに3分の1の割合で相続させる。預貯金については均等な割合で相続させる。」のように個別の財産に対して細かく相続分の指定をしているであれば、解釈の余地がないので遺産分割協議も必要はありません。
しかし、相続財産の数が多い場合に「相続財産をAに3分の2、Bに3分の1の割合で相続させる。」とだけ書いてある場合、どの財産を分けるのかについては、別途相続人間で話し合いをして決めなければなりません。